じっとしていても、動かしてみても…

 
もう何年も前のことです。
 
 

とある会社の社長・Kさんが腕の付け根の奥が痛いと言って、珍しく予約もせずにご来院されました。

 

とても大きな飲食店チェーンの社長さんです。

 

あまりにも痛いので病院に行って検査をしてもらって、その帰り道だとおっしゃいます。

 

「スゲェいてぇんだよ。少しでも楽にしてくれたらセンセーは神サマだ」

とおっしゃいます。

 

 

その日のKさんの痛みは、じっとしていても、動かしても同じでした。

 

 
筋肉や靭帯、骨膜に問題がある場合、動かすと痛みに強弱が出るはずです。
 
それが、動かすことはできるけれど、痛みは変わらないと言います。
 
 
 
 
ただ痛みは激しい。
 
 
 
 
病院でもすぐには原因が分からない…。
 
 
 
 
 
これは少しいつもと違って変だと思いました。
 
 
 

「明日、俺の会社のゴルフコンペがあるんでね、それにどうしても出てぇんだよ」

 

とおっしゃるので、

「社長も優勝を狙いたいですもんね!」と冗談交じりにお答えしたら、

 

 

「ちげぇんだよ。俺は社員みんなの顔が見てぇんだよ!」

 

とのこと。

 

 

結局、あまり触ることはできないと判断し、小さい鍼を浅く腕の周囲に何点かテープで留めて、ホットマットのあるベッドで少し横になっていて頂くことしました。

 

「少し楽になった。ありがとうありがとう」とおっしゃって、その日はお帰りになりました。

 

 

それ以来、お会いしていません。

 

 

その後…

後日、検査結果は癌で、即入院になったとご家族から伺いました。

 

Kさんの癌は急速に進行し2ヶ月ほどでこの世を後にされました。
 

会社のゴルフコンペには参加されたそうです。

 
今となっては、あの時の施術でほんの僅かにでも楽になって頂けたと信じるのみです。
 
 
 
 

強い男になりたいと言っていたKさん

大好きなクライアントさんでした。

70代の社長さんでしたが、
 
「センセー、俺はもっと強い男になりてぇ、もっともっと会社を大きくしてぇんだよ」、
 
「センセー、どうやったら、俺はもっと長生きできるかね?」
 
といつも笑いながら豪快におっしゃっていました。
 
 
 
 

今でも時々思い出します。

 

 

※ご家族のご了承の元に書かせて頂きました。